Qualifying Examとは

 

ここ数日は宿題の英語エッセイ(5ページ、1600 word超)で苦労していたが、今日無事提出できたのでブログで日本語も書こうという気になった。

 

今週の大きな心境の変化として、数学に気が向くようになった。英語の課題がある中でも、ぼーっとレクチャーノートを漁って読むようになった。今までは大学院出願や渡航準備だけでキャパオーバーしており、とても数学する余裕は無かった。だからこれは自分にとって大きな一歩だ。世の中には留学準備と研究を並行して行う人もいるらしいから恐ろしい。

 

どういう数学をしているかというと、専門の集合論…ではなく、群論や環論。しかもSylowの定理とかPID, UFDとかそういったレベルの話。というのも、この前指導教官(仮)に会ったときに言い渡されたアドバイス(というか指令)が「Qualifying Examの勉強に集中せよ」だったからだ。

 

Qualifying Examとは、アメリカのPh.D. studentにとって博士号取得への第一のチェックポイントとも言える試験のことで、自分の大学の場合2年生の終わりまでに合格することが求められている。合格できなかった場合は留年ではなく退学。場合によってはMaster degreeがもらえるらしいが、これでは記念以外の何でもない。

 

とはいえ試験のレベルはそう高いものではなく、扱う内容は日本の数学科ならば学部の必修授業で習うようなものばかりである。少なくとも自分のところはそうだし、見たところ東大院試よりは簡単そう。Stack Exchangeに色々な大学のQualifying Examが載っているページ(https://math.stackexchange.com/questions/267554/phd-qualifying-exams)を見つけたので、一度眺めてみると面白いかもしれない。しかもこの試験は院試と違って一発勝負ではなく、まず入学直前に1回、その後2回まで受験できるという優しい仕様。もし一度失敗したとしてもリカバリー可能だ。

 

しかし自分が先生から言われたことは、その入学直前のワンチャンスでQualifying Examを是非終わらせてくれということだった。ここで試験を落とした場合、如何に授業を沢山受けさせられることになるか、如何にそれが集合論の勉強にとって時間の無駄かを強調された。そう、集合論という分野はQualifying Examで学んだことがほぼ生かされない異色の数学なのだった……。

 

ということで今はおとなしく試験のための数学をしている。すべてが忘却のかなたにあると感じているが、今復習すると余計なことまで分かって面白い。この前知った定理でSchur-Zassenhausの定理(https://en.wikipedia.org/wiki/Schur%E2%80%93Zassenhaus_theorem)というのがある。主張はこう:

 

Gを有限群、Nをその正規部分群とする。Nの位数とG/Nの位数が互いに素のとき、GはNとG/Nの半直積である。

 

(応用例)位数6の群Gを考える。Sylowの定理よりGは位数3の正規部分群Nを1つだけもつ。Nは巡回群C_3と同型。G/Nは位数2で巡回群C_2と同型。Schur-Zassenhausの定理よりGはC_3とC_2の半直積。準同型C_2→Aut(C_3)は2つしかなく、GはC_6もしくはS_3と同型。

 

Sylowの定理からGはC_2と同型な部分群をもつので、Schur-Zassenhausの定理を使うまでもなくGは半直積の形で書けると分かる。しかもShur-Zassenhausの定理の証明は群コホモロジーを使っているので、上の応用は明らかなオーバーキル。まあ一種のジョークとして面白いと思ったのだった。

 

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コメント: 4
  • #1

    まつお (土曜日, 09 6月 2018 14:31)

    Qualifying Examはそこまで対策しなくても合格できそうですね。

    博士修了したら日本でポスドク探しますか?



  • #2

    Eureka GAP (日曜日, 10 6月 2018 22:32)

    一旦は欧米で探すと思います。というのも、
    1. 数年後も自分のresearch interestは変わらず、専門家の分布も大きくは変わらないだろう
    2. 数年後には国外のコネクションのほうが強くなるだろう
    という推測があるからです。住む場所にはこだわってないので、帰国がベストな選択肢になればそうします。

    勿論これは現段階での「たられば話」に過ぎないと断っておきます…。

  • #3

    財布 (水曜日, 13 6月 2018 04:35)

    ご主人の元を離れて、風に乗ってどこか遠くに行きたいなあ

  • #4

    Eureka GAP (木曜日, 14 6月 2018 01:33)

    ワヘイヘイ先輩の財布が何か言ってる