数学科の授業

 

米国大学(院)の数学科の授業に関して真偽不明の噂を3つほど聞いていたので、それに関する回答。そもそもそんな噂聞いたことないとか、それは大学によるだろうとか色々突っ込みどころがあると思うが、単純にGAPの個人的体験談として読んでほしい。

 

噂その1。最初のセメスターは必修の授業や毎週出る大量の課題に追われて研究どころではない。

 

自分に関してはそんなことはなかった。これは単に日本の数学科のカリキュラムが幅広かったおかげだ。米国大学院の必修授業の内容はほぼ既に日本で履修済みのため、Qualifying Examさえ通っていれば大体授業は免除される。自分は微妙にしくじって複素解析は履修せざるを得なかったが、出席が要求されるわけでもなかったので負担はほとんど無かった。宿題が面倒くさいなあという程度。そのお陰で研究というほどではないものの指導教官とセミナーをすることができた。そんなアメリカの大学院の授業レベルに関しては次のような噂も聞いたことがあった。

 

噂その2。日本では学部生の読む教科書として有名なアールフォルスの複素解析だが、アメリカでは大学院で使われる教科書である。

 

まあだいたいその通りだった。厳密に言うと授業でアールフォルス自体は使っていないが、今季の複素解析の授業はちょうど東大数学科の学部2年生が秋学期に習うような内容だった。つまり1から始めてRiemann mapping theoremの証明の概略で終わる感じ。これらのトピックはアールフォルスの前半部にだいたい書いてあるので、噂その2は本当だと言ってよいだろう(ところで自分はアールフォルスの後半部はページを開いたことすらない)。じゃあ学部生は何を勉強しているんだという話になるのだが、

 

噂その3。アメリカの学部生の授業は日本の高校生レベル。

 

これに関しては自分の記憶間違いだったのかもしれない、流石に高校生レベルとは言えない。たしかに最初は高3レベルの計算から始まるみたいだけど、ちゃんと学部生のうちに線形代数や群論環論くらいは皆きちんと習うみたいだ(そしておそらくカリキュラムは大学ごとに大きく異なる)。そもそも学部生でも大学院生の授業やQualifying Examを先取りできる仕組みになっているので、大学院に進みたい人は勝手に高度な内容を勉強しているようだ。

 

数学科の普通の授業に関しては可もなく不可もなく、とりたてて良いことがあるわけでもなかったので、もうこれ以上何もコメントすべきことは何も無い。しかし!専門科目の集合論の授業はマジでヤバかった(語彙力)ので次の記事ではその話をしたい。

 

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コメント: 1
  • #1

    simplicial object (金曜日, 07 12月 2018 14:34)

    アメリカは学生も先生も多くの大学に分散しているのでよほど大きなところでないと授業の絶対数が少ない(例えばうちだと来学期は整数論の授業は普通の類体論とかレベルの授業は教える人がいなくて潰れて、perfectoidのセミナーレベルの授業しかないなど)という問題点はありそう(トポロジーのトピックスの授業も開講される学期とそうでない学期がある)